AIの本当の仕事は、悪い仮説を速く殺すことだ
医療データで薬局の立地モデルを作る際、ありふれた仮説から始めた。薬局が密集した場所は過飽和で危険だ、という飽和の論理だ。AIエージェントに、数千万件の処方、廃業履歴、人口統計で検証させた。結論は明快だった。密度は薬局の売上も廃業も説明できず、市郡区・行政洞・半径の三つの解像度すべてで同じだった。説明力は事実上ゼロだった。
デモが誇った0.93の精度は、空間リークが生んだ錯覚だった。AIは空間汎化と生存分析でその錯覚を剥がした。人が何日もかけて疑うべきことを、数時間で正直に判定したのだ。
AIはどこを見ればよいか分からない
ここで止めていれば、結論はただダメだだった。方向を変えたのは、現場を知る人の一言だった。薬局の売上は結局、隣の病院の処方から生まれ、処方量は診療科ごとに違う、という洞察だ。
その一文でロジックを組み直した。密度の代わりに、近隣病院の処方の強さを競合薬局数で割った処方需要指数だ。もう一度回すと、売上はきれいに分かれた。下位層と上位層の間で二倍の差だった。
結合の公式:専門家がどこを、AIが本物かを
AXを誤解するよくあるやり方は、AIが勝手に全部やってくれるという期待だ。実際に働かせると逆だ。専門家はどこで売るかを知っている。AIはそれが本物かを素早く検証する。どちらか一方では足りない。
副次効果も大きかった。クラウドデータベースから公共API、生存分析まで、分析パイプラインを一つのセッションで組み上げた。仮説を立てて検証するサイクルの摩擦コストがゼロに近づく。だからこそ、より多く、より速く間違えられる。