企業のAI研修で繰り返し起きる失敗とは何か
エージェント、ハーネスエンジニアリング、ループエンジニアリングのような、今話題の言葉から教えてほしいという企業が多い。ところが実際に受講を申し込む方の少なくない割合が、Claude Desktopすら使ったことがない。ABCDも知らない状態で論文の書き方から学ぼうとするのと変わらない。
そんな状態で研修を進めれば、結果は目に見えている。研修が終わった瞬間、覚えた用語は残っても、実際に手を動かしてできることは何一つ残らない。
業務自動化はどのような段階を経るのか
業務自動化には順番がある。最初の段階はインストール不要で、チャット画面の中でそのまま使うレベル——Claude DesktopやChatGPTのようなツールだ。二番目はノーコードのワークフローで、普段使うアプリの流れをつなげる中間レベル。三番目がバイブコーディングで、ここから自由度が大きく上がる代わりに、学ぶべきことも一気に増える。その上にエージェント——自分が作ったツールに判断する頭脳を宿す仕事——があり、さらにその上にハーネスエンジニアリング、その開発を効率的にする体系がある。
英語学習に例えるとわかりやすい。Claude Desktopは自動翻訳機を使うようなもの、バイブコーディングはABCDを自分で覚えて文章を書くこと、エージェントはその言語力で自ら文章を作ること、ハーネスエンジニアリングはその文章の文法をチェックしてくれる体系に近い。一段も踏んでいない人にいきなり三段上の概念を渡しても、何も残らない。
研修が終わると学んだことが消えてしまうのはなぜか
一、二日の研修一回で何でもできるようになると期待するのが、最もよくある誤解だ。AIも結局、自分で使って失敗しながら身につける時間が必要で、その時間を会社が確保してくれなければ、学んだ内容は各自の忙しい業務に押されてそのまま消えてしまう。
実際にAIをうまく使いこなしている組織を見ると、業務自動化だけを専門に研究する部署を別に持っていることが多い。学びに時間と余地を投資した組織と、そうでない組織の差はここで分かれる。
サイドプロジェクトの定期レビューがなぜ学びを完成させるのか
ここでSH Consultingが研修のあとに必ず勧めていることが一つある。業務とは関係のないサイドプロジェクトを一つ決めて実際に作り、そのプロジェクトを定期的にレビューする場を自分で作ることだ。
業務と絡んだ学習計画は、締め切りと優先順位に押されて結局後回しになるが、サイドプロジェクトはレビューの予定そのものが、ちょっとした強制力になる。そして何より、学んだ概念は結局自分の手で作ってみて初めて身につく。Learn by doingという言葉は、まさにこのことを指している。