なぜ最良のAXは現場の手から生まれるのか
自動化が失敗する典型的な理由は、コードが難しいからではなく、業務の文脈が移らないからです。どの項目がどこへ行くのか、例外はどう処理するのか、何を重複と見なすのか——こうしたルールは、毎日その仕事をする人の頭の中にしかありません。
この暗黙知を言葉で外部の開発者に伝えると半分は抜け落ち、抜けた半分で事故が起きます。逆に、その仕事を知る人が自分で作れば、説明するまでもなくルールがそのままコードになります。
現場が作った発注自動化はどんな姿か
財務・経営管理の業務をしていた担当者が、バイブコーディングの教育を受けたあと、毎日繰り返していた発注業務を丸ごと自動化しました。注文内訳をシステムから取得し、決済完了分だけを抜き出し、商品の性格に応じて発注先を分け、書式に合わせて発注書を作り、台帳に記録し、メールで送る流れです。
いまではこの全工程が、毎営業日の決まった時刻に人の介入なしで実行されます。肝心なのは派手なコードではなく、本人だけが知っていた分類ルールと例外処理が漏れなく反映された点です。
ではAXをどう定義し直すべきか
AXはAIツールを会社に導入することではありません。すでにワークフローを手にしている現場の人にAIを渡し、その仕事を一番よく知る人が、その仕事をなくす道具を自分で作るようにすることです。
こうして作られた自動化は、一件のプロジェクトで終わりません。同じ人が次の業務も、その次も同じやり方で減らしていき、自動化がその人の働き方そのものとして定着します。
AX教育の本質とは何か
だからAX教育の目標は、開発者を増やすことではなく、現場の人が自ら自動化できるようにすることです。教育が届くべき相手は、IT部門ではなく、毎日同じ仕事を繰り返す実務者です。
ワークフローを知る人にAIの扱い方を教えること。これが外注開発やツール導入よりも、深く長く続く変革を生むと考えています。