バイブコーディングが上手い人は何が違うのか
バイブコーディングの研修をしていると、同じ授業を受けても結果が大きく分かれます。その差はたいてい、コーディングの実力ではありません。AIにどこまで仕事を丸投げするか、というたった一つの姿勢です。
AIには妙な癖があります。自分で十分できることなのに、しきりに人にやらせようとするのです。「このサイトに行ってこれをダウンロードして」「設定メニューでこれをオンにして」と案内します。素直に従う人ほど、その過程で疲れて脱落してしまいます。上手い人は逆に押し返します。「それ、あなたがやって。」
事例1 — gitのインストールをAIにやらせる
バイブコーディングの最初の関門からそうです。AIにコードを実行してと頼むと、真っ先に「gitをインストールして」と言われます。初めて見るサイトに入り、何かも分からないプログラムをダウンロードし、慣れないインストール過程を通り抜けなければなりません。多くの人はまさにここでつまずきます。
これを自分で経験する代わりに、「あなたが入れて」の一言で済みます。エージェントが今のPC環境を確認し、適切なコマンドを選んで入れてくれます。「ここでnextを押すの? installを押すの? このオプションは何を選ぶの?」とつまずいていた箇所を、まるごと渡せます。
事例2 — Vercel・Supabaseの設定をAIにやらせる
もう少し進むと、VercelとSupabaseに出会います。Vercelは自分が作ったウェブサイトをインターネットに公開し、他の人がアクセスできるようにするサービスで、Supabaseは会員情報や投稿といったデータを保存するデータベースを手軽に用意してくれるサービスです。どちらも、バイブコーディングでそれらしいものを作れば、ほぼ必ず通ることになります。
問題は設定です。サイトに登録し、設定メニューに入ってあれこれオンにし、値を入れなければなりません。しかもメニューは多く、大半が英語です。ここでも答えは同じです。「あなたが設定して。」会員登録のように本人の身元が必要な部分だけ自分でやり、その後の設定はエージェントに渡します。
一つコツがあります。VercelやSupabaseをAIが直接操作するときは、MCPよりCLIのほうが速く解決します。「CLIでやって」と頼んでください。MCPとCLIがそれぞれ何かは、また別の機会にほどきます。今は「AIが設定を触るときはCLIでやってと頼む」くらい覚えておけば十分です。
gitを入れてと言われたら → 「あなたが入れて」
Vercel/Supabaseを設定してと言われたら → 「あなたが設定して」(会員登録だけ自分で)
localhost/デプロイを確認してと言われたら → 「あなたが自分で確認して」
設定はMCPよりCLIが速い → 「CLIでやって」事例3 — テストと確認までAIにやらせる
作ったものがちゃんと動くか確認する段階も同じです。AIはよく「localhostで立ち上げたので自分で確認して」「デプロイしたのでブラウザで確認して」と言います。ここでlocalhostとは、自分のPCの中だけで一時的に動かす、テスト用のアドレスのことです。
ここでも「あなたが自分で確認して」で渡せます。今どきのエージェントはブラウザを自分で開いて画面を見て、ボタンを押してみて、問題があればそれを根拠に直すことまでします。人が目で確認して言葉で説明し直す往復を減らせるのです。
では人は何をするのか
ここまで来ると「じゃあ自分は何をするのか」と思えてきます。人がやるべきことは、はっきり残ります。一つ目は、本人の身元や支払いが必要なことです。会員登録、カード登録、本人認証といったものは、AIが代わりにはできません。
二つ目は、何を作るかを決め、結果が気に入ったかを判断することです。方向を定め、これが自分の望んだものかを決める役割は人にあります。インストールし、設定し、確認する「手足」をAIに渡せば、人は「何を・なぜ」に力を注げます。委任は人を怠けさせるのではなく、より大事なところに集中させてくれます。
委任の本当の意味
まとめるとこうです。AIが自分に何かをやれと言ってきたら、問い返してください。「それ、あなたができるよね。あなたがやって。」本当に人にしかできないことでなければ、AIは言えばやります。できるのに、癖のように人へ渡していただけです。
バイブコーディングはよく「AIに委任すること」と言われます。より正確には、AIができる仕事を人が代わりに抱え込まないことです。上手い人と苦労する人の差は、まさにその境界をどこに引くかで分かれます。