ゾンビUI——戦後の建築ブームから借りた名前
Stripeのデザイン責任者ケイティ・ディル(Katie Dill)が Lenny and Friends Summit 2026 の講演で持ち出した比喩は建築だ。第二次世界大戦が終わると、アメリカには史上最大の建築ブームが訪れた。新しい工法が登場し、建物が速いペースで建っていった。そのとき建築家たちは1920年代のモダニズム様式を持ち込んだ。単純な幾何学、飾りのない面、一、二色の配色を特徴とする様式である。
ディルは、モダニズムを生んだ人々には意図があったと言う。問題はその後だ。急いで建てなければならず、様式は理由もなく複製された。思考は次第に薄くなり、残ったのは文脈に合わない型どおりの枠だった。昔の銀行の建物は信頼・安定・安全を外見で示していたが、ブーム後の銀行は他の建物と見分けがつかなかった。
ディルはこうした建物をゾンビ建築(zombie buildings)と呼ぶ。何とも区別がつかず、使う人も周囲の文脈もブランドも顧みない建物のことだ。そして今は再び建築ブームの時代だと見る。AIのおかげで、以前は30人でしていた仕事を3人でこなし、誰もが画面を作れるようになったからだ。このブームから出てくる画面が同じ道をたどれば、それがゾンビUIである。単調で、中身がなく、誰にも世話されない画面だ。
AIがゾンビUIを作る三つの経路

第一に、最もありふれた答えだ。ChatGPTやClaudeのような対話型AIの基盤であるLLM(大規模言語モデル)は、最も確率の高い答えを出すのが得意である。LLMは膨大な文章を読み、次に来る言葉を当てるように学習したモデルだ。そのため、すでに流行したものやうまくいったものをよく教えてくれる。反対に、自社のブランドと自社のユーザーにだけ合う答えは苦手だ。ディルが見せた例は、ソフトウェア会社のように見える韓国式焼肉店のサイトである。ちゃんとしたサイトだが、飲食店らしいところが一つもない。
第二に、完成したという錯覚だ。AIは何かをとても速く、終わったもののように見せる。ディルは冷凍ブリトー(burrito)にたとえた。冷凍庫から出して電子レンジで90秒温めれば昼食になる。ほとんど食べられない味でも、速いので見過ごされる。一文打ち込むと、角が丸く影の入った画面が出てくる。すっかりできたように見えるが、本当に問題を解いているか、他と区別できるかは別に問わなければならない。
第三に、使い捨ての扱いだ。あまりに簡単に速く作れるので、捨ててもよいもののように感じられる。そうするうちに、決定に対する責任を見失う。この画面を誰が続けて直し、管理するのかといった、長い目で見た問いが抜け落ちる。
ディルは、この三つが重なると、街が同じ建物で覆われるように画面もそうなると警告する。反対の例として、ディルは小さな心配りが見える画面を挙げた。カレンダーを開いたブラウザのタブに今日の日付が表示されること、決済を代行するエージェントが直面する問題を先回りして見越し、解決の案内を入れておくことのようなディテールである。エージェントとは、人に代わって複数の段階を自分で処理するAIプログラムだ。
処方1——基準を先に立てる:「どう作ったかにかかわらず、成果物は良いか」
Stripeは、楽観(optimism)というブランドの価値を、色、文章、扱う主題、世に出す製品に至るまで、大小のディテールに込めている。多くの人が同時に作り、多くのものが変わるので、この基準をそろえることが重要だとディルは言う。
基準が試された場面もディルは紹介した。広告案を検討するデザインレビューで、早く出したがっていた協業部門の同僚が尋ねた。AIで作ったものの品質基準は何か。ディルの答えは、作り方はユーザーにとって重要ではない、というものだった。ユーザーが気にするのは良いか悪いかであり、Stripeもそうあるべきだ。その場で基準をそろえた後、チームは直す点を17個持ち帰った。霜の表現を少しずつ手直しし、縁を柔らかくし、泡を少し小さくする、といった具合だ。社内ではこうした細かな手入れを「Pepsi bubbling」(細部を入念に手直しすること)という動詞で呼ぶそうだ。
目標は完璧ではない。顧客に見えるものより一段深く踏み込むことだ。ディルは、その手間がやがて顧客に伝わると見ている。
この基準を育てる方法としてディルが挙げたのは、気づく力だ。ユーザーが口にすることだけでなく、実際に必要としているものを見て、周りで何が優れていて何が並みなのかを見続けよ、ということだ。使っている製品だけでなく、芸術や科学のような他の分野でも探せとディルは言った。
処方2——基準を機械に埋め込む:画面ではなくデザインシステムを設計する

ディルは、今後はすべての決定に人が関われなくなると言う。デザイナーなしで作られる画面、人が寝ている間に問題を見つけて直すエージェント、ユーザーに合わせてリアルタイムに生成される画面がすでに現れている。だからデザインシステムが再び注目されるのだとディルは見る。デザインシステムは、色・フォント・ボタンのような部品と使うルールを一つにまとめた、会社の画面設計の規約である。
以前のデザインシステムは、すべてを書き出さなくてもよかった。空白は、いつもその場にいたデザイナーが埋めたからだ。今は多くの人とエージェントが分散して作るので、決定をより明確に定義しておかなければならない。ディルの表現では、デザインの対象はもはや画面ではなく、システムそのものだ。
ディルが挙げた歴史上の例はグーテンベルク(Gutenberg)だ。グーテンベルクは、小文字26字と大文字26字だけでなく、幅の異なる文字、略字、合字まで、290種類の活字を作った。両端揃えで刷るとき、単語の間にぎこちない空白ができないようにするためだった。機械で刷っても手書きのように見えるよう、システムを十分に広く、十分に確固としたものにしたわけだ。ディルは、古いシステムが一貫性を広めたのなら、新しいシステムは意図を広めなければならないとまとめる。
Stripeが自ら経験した試行錯誤もディルは語った。最初は、デザイン文書を読むMCPをつないだ。MCPは、AIが外部の文書やツールを読み書きできるようにつなぐ接続規格だ。結果は期待に届かなかった。十分に具体的ではなく、三人が同じプロンプト(AIに与える依頼文)を入れると、三通りの異なる結果が出た。今はデザインシステムの上にCLIを作って使っている。CLIは、ターミナルでコマンドによって動かすプログラムだ。このCLIが、AIをはるかに言うことを聞くようにする枠として働き、作る人が作業しているまさにその場で、必要な文書を必要なときにだけ入れてくれる。会話が長くなるほどAIが前の内容をぼんやりと扱うようになる問題を避けるためである。
最大の違いは、部品だけを収めていない点だ。画面のテンプレートや使用の流れまで入れてあり、システムがStripeの製品はどう動くべきかを知っている。ディルは、以前よりはるかに確固とした意見を持つシステムだと説明する。ただし、これは土台にすぎないと付け加える。建築家クリストファー・アレグザンダー(Christopher Alexander)の言葉を借りて、システムはあらゆるルールを守りながら死んでいることもありうる、とディルは述べた。
処方3——「作り終えた」と「良い」を取り違えない:編集者の席

以前は、品質を選り分ける作業が開発過程のあちこちに組み込まれていた。アイデアが20個あっても、人をつけられるのは一つだけで、進めながら絶えず突っつき、磨いていった。今は、アイデア20個を一週間で作ってみることができる。仮想の製品を前に会議をする代わりに、実際の成果物に触れられるのは良い点だ。その代わり、選り分ける作業が作った後ろに押しやられ、すでに作ったものに「違う」と言うのははるかに難しくなった。
だからディルは、編集者の役割が今最も重要だと言う。最初から最後まで見て、これらが一つのまとまった製品になるかを判断する人だ。作ったからといって終わりではなく、終わったからといって良いわけではないことを、新たに身につけなければならないとディルは述べた。
編集の力を育てる方法としては、ユーザーのように自分で体験してみることをディルは勧める。本当に問題を解いているか、ユーザーの考え方に合っているか、前後がつながっているかを見る。単独で見ると悪くない画面も、ユーザージャーニー、つまり入ってきて用事を済ませて出ていくまでの流れにつなげてみるとちぐはぐに見えることが多い。編集は、合格・不合格を分けるだけの仕事ではなく、未完成のものを最後まで押し進める仕事でもある。
ディルはナビル・クレイシ(Nabil Qureshi)の文章を引用し、AIが作った粗雑な成果物が気に障る理由を、ディテールがどうでもいいという感じに求める。カップが緑色だが、青色でもまったく変わらなかっただろうと思える感じである。編集者はすべての決定、事実上すべてのピクセルに責任を負う。
その例として、アニメーション一つを56回作り直した事例をディルは見せた。最初の版も見ごたえはあったが、一フレームずつ見ると動きがどこかぎくしゃくしていた。56回の修正の末に、よりリアルで生き生きとした場面になった。ディルは、AIがなかったらそれほど複雑な場面や、それほど多くの視点を試すことはできなかっただろうと付け加える。一度で終わりはしなかったが、AIが試せる幅を広げたということだ。
処方4——Protect the strange(奇妙なものを守れ):AIで床ではなく天井を上げる
ディルが最も大切にしていると言った最後の処方だ。AIは単調さを大量生産することもあるが、これまで現れた中で最大の創作の触媒でもある。誰もが何かを作る時代であるほど、他と違うものになることはより難しく、より重要になる。
ディルは、チャット画面・グラフ・コマンドラインが今の時代のインターフェースの完成形であるはずがないと言う。インターフェースとは、人がコンピューターとやりとりする窓口、つまり画面と操作の仕方である。マルチタッチがまったく新しい操作を可能にし、シンセサイザーが新しい音を作ったように、AIで新しいインターフェースと新しい美意識を作るときだというのだ。良い方法論はまだ書かれておらず、私たちが書けばいいとディルは言った。Stripeでは、人間のマーブリング作家が作った模様で出版物の表紙を作った後、AIで色と線をさらに磨き上げた。人の判断をAIで広げた事例である。
AIをより良い創作パートナーとして使う方法として、ディルは二つを挙げる。一つは入力を具体的に与えることだ。「韓国式焼肉店のウェブサイトが必要だ」で止めず、私たちが信じていること、良いと見ていること、大切にしていることを一緒に入れ、基準を作る際に参考にした資料も入れる。もう一つは出力を試すことだ。ブリトーの誘惑に負けず、もう一段押し進め、批評家の役割を担うエージェントをつけて成果物を叩かせる。それでも、より良いものを最後まで求める主体は自分自身でなければならないとディルは言った。
ディルは、これらはコツにすぎず、より難しいのは文化だと言う。型にはまったパターンに従うほうが安全で楽だからだ。チームを率いる人には、AIを使えとだけ言わず、探索する余地を与えるようディルは勧める。ディルの表現は「Protect the strange」(奇妙なものを守れ)だ。AIが作るコストを下げたのだから、その節約分の一部を本当に特別なものを作ることに使おう、ということである。すでに作っていたものをより速く作ることにだけ使えば、最も面白い部分を逃す。AIは床だけでなく、天井も上げられる。
結び——ゴシックの聖堂のように、作った人の手の跡が見える製品
ディルは、戦後モダニズムの正反対の例としてゴシック建築を挙げる。19世紀イギリスの批評家ジョン・ラスキン(John Ruskin)は、ゴシックの建物が一つとして同じではなく、柱一本さえ互いに異なる点に注目した。ディテールごとに作った人の手と考えが現れ、心のこもった手間が感じられるというのだ。
ディルは、ユーザーが求めているのはまさにそれだと言う。ユーザーは、3Dアニメーションを30分で作ったことには感嘆しない。自分の問題を解いてくれ、必要を先回りして見越したディテールがあり、ブランドに個性があるときに感嘆する。今回の建築ブームでゾンビ建築のデジタル版を作らずに済み、創作のルネサンスにできるというのが、講演の最後の言葉である。
今日すぐ試せること——講演でディルが直接勧めた四つ
一つ、AIに画面や文章を頼むとき、ブランドが信じていること、何が良いかの基準、参考資料を依頼文に一緒に入れる。「飲食店のウェブサイトを作って」の一行で終わらせない。
二つ、出てきた結果をユーザーのように最初から最後まで自分で使ってみる。画面一つではなく、入ってきて用事を済ませて出ていくまでの流れで見る。
三つ、最初の結果で止まらず、もう一度直す。批評家の役割を担うAIに別途レビューを任せ、弱点を探させるのも一つの方法だ。
四つ、チームを率いるなら、同じ結果をより速く出すことにとどめず、見慣れない試みをする時間と余地を残しておく。
